異文化コミュニケーション研究所
    Intercultural Communication Institute

 
第65回 異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ


タイトル

『親密圈の異文化問題を考える』シリーズ第4回
『留学生と本音で語ろう!』
国際結婚を考える―異文化間コンフリクトの視点から―

司  会

ギブソン松井佳子 (本学英米語学科教授・当研究所所長)

日  時

2010年6月11日(金) 15:10〜17:10 (開場:14:40〜)

場  所

神田外語大学(千葉・幕張) 5号館ミレニアムホール

今日本における国際結婚はどんどん増えています。みなさんは国際結婚という言葉を聞くと、どんなことを思い浮かべますか? 「ダーリンは外国人」の甘いイメージでしょうか。あるいは相互理解がむずかしくて大変なイメージですか?  おそらくどちらもある程度当たっているのでしょう。しかし国際結婚において異文化間コンフリクトを避けることは無理だと考えられます。憧れだけで突き進むことも危ないですが、かといって悲観的になる必要もないでしょう。留学生と日本人の6名の学生さんたちに熱く本音でいろいろ話しあってもらいましょう!

 パネリストの紹介

アンナさん(スペイン・バルセロナ自治大学)

  スペインのバルセロナから来たアンナです。スペイン語とカタルーニャ語の二言語話者です。憧れの日本に来ることが10年前からの夢でした。3年前、スコットランドへ留学し、初めて異文化や一人暮らしを経験しました。今回を含めた二回の留学生活で様々な国の友達ができ、その国の文化や習慣なども理解できるようになりました。こうした経験は人間として成長するためにもっとも大切だと思います。自分のことだけでなく、他人の考えを理解しながら、色々学びましょう。


チュックさん(ベトナム出身・ホーチミン市人文社会科学大学)

  ベトナムのホーチミン市から来たチュックです。川端康成の作品を原語で読みたくて日本語の勉強を始めました。 語学の勉強のために来日しましたが、日本人の友達に加え、イギリス人の彼氏や中国人の兄貴分、ブラジルやインドネシア人の親友も運よくできました。この“国際的な大家族”のおかげで色々な生き方を理解できるようになり、異文化に対する見方も積極的なものへと変わりました。帰国するまでの限られた時間、皆さんと異文化の未知の部分についてもっと学び合いたいです!


フリッツさん(インドネシア出身・リア外国語大学)

  はじめまして、フリッツです。インドネシアから来ました。趣味は本を読むこととテレビを見ることと、旅行することです。暑い国から来ましたが、寒いところが大好きです。国際恋愛の経験はありませんから、客観的に見られると思います。よろしくお願いします。


田邊 知恵美さん(英米語学科3年・山梨県出身)

  私は国際交流が好きで、日々いろいろな国の人との関わりを大切にしています。それはこの大学に入って留学生と友達になったこと、留学先で更にたくさんの異文化背景を持つ人々との出会いや、国際恋愛などを通して自分の中の視野が広くなり、自分の考え方が変わるきっかけとなりました。そして現在は価値観の違いや異文化などにとても興味を持つようになりました。異文化は時に、意思疎通の上で誤解を招くこともありますが、その反面異文化を共有できることはとても素晴らしいことだと思います。国際結婚については、考えが未熟なところもありますがこの機会によい意見交換ができればと思います。


小谷野 早織さん(英米語学科4年・千葉県出身)

  大学2年の時から1年間アメリカに留学をしていました。そこから、文化の違うたくさんの友達と関わり、日本では学べない事を最大限に学んできました。今私はこの留学先で出会ったアメリカ人の彼氏がいます。彼の家族とはよく遊びに行ったり、買い物、エステ、「家族」の大切さを考える伝統行事、クリスマスにも招待してくれたりとまるで本当の家族のように接してくれています。私の卒業と同時に婚約を考えています。これからの事はまだ2人で考えていきますが、今回の講演会を通じて、留学生や同じ日本人学生の意見を聞いて共に異文化交流、国際結婚について話し合う事を楽しみにしています。


藤本 真央さん(スペイン語学科4年・埼玉県出身)

  スペインに10カ月留学してました。この留学を通して、国際結婚や、異文化理解についてよくよく考えるようになりました。自分が当たり前のように考えていることって、もしかしたら当たり前じゃないのかもしれない!国際結婚って憧れだけど、実際どうなんだろう。この機会に一緒に考えてみませんか。
 
 講演会報告 (今千春、神田外語大学 非常勤講師)

 「親密圏の異文化問題を考える」シリーズ第4回にあたる今回は、国際結婚について、特に避けられない問題の1つである異文化間コンフリクトについて議論が行われた。パネリストはスペイン・ベトナム・インドネシアからの留学生3名と日本人学生3名の計6名、司会進行はギブソン松井佳子本研究所所長であった。

 国際結婚はステレオタイプが多く、日本人女性にとって西洋系の男性との結婚は憧れであった。これは、日本の西洋文化への憧れが根底にあり、逆に西洋のアジアへの憧れもあるという。こうした互いの出身国のイメージから国際恋愛・結婚に発展した場合、相手を個人として見ているのかという問題が生じる。互いに主体性を持ち、相手と向き合うことが重要であるという指摘がなされた。

 実際の国際結婚で直面する問題としては、どこに住むかという問題、言語の問題が取り上げられた。
 どこに住むかという問題は、自身の自己実現や老後など人生設計に関わる問題で、一方が自己実現をすると、一方が自身の自己実現を諦めなければならない状況も生じる。また、相手の国に長年住んだとしても、老後には母国回帰を考える可能性があるという問題も挙げられた。

 さらに、国際結婚における大きな問題は、言語の問題である。共通言語の選択、母国語以外の言語で本当の自分を伝えられるのか、相手を本当に理解できるのかということについて、活発な議論が交わされた。また子どもが生まれた場合、親の言語を継承すべきかについても様々な意見が出された。こうした問題は、言語が社会的有益性だけではなく、個人が持つコミュニケーション・リソースの一部であることを表している。

 最後に、酒井邦弥本大学学長の国際結婚を乗り越えるには若さと愛が必要であること、老後は誰にとっても予測不可能なものであるというコメントから、結婚が人生において重大なテーマであることが改めて示された。
 


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