異文化コミュニケーション研究所
    Intercultural Communication Institute

 
第56回 異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ


タイトル

Perceiving Intercultural Communication: The Gifts of E.T. Hall
異文化コミュニケーションを考える- E.T. Hall からの贈り物

講  師

ジョン・コンドン 氏 (米・ニューメキシコ大学 リージェント教授)

司  会

桝本 智子 (本学国際コミュニケーション学科 准教授)

日  時

2009年6月4日(木) 17:00〜19:00 (開場:16:30〜)

場  所

7号館(2階 クリスタルホール)

 講師からのメッセージ

This year marks the 50th anniversary of the publication of the book that changed the way people think about communication and that launched the field of intercultural communication. The book is The Silent Language, by E.T. Hall. To honor Hall's lifetime of work, John Condon will explore Hall's ideas on how our cultures structure time, space, movement, learning, and other aspects of communication in everyday life. Prof. Condon has been a neighbor and friend of Hall for many years, and a former colleague at Northwestern University.

今年は異文化コミュニケーション分野の草分け的存在として知られるE.T.ホール氏の『沈黙のことば』が出版されてからちょうど50周年の記念すべき年である。このホール博士のライフワークを振り返って、日常生活において文化がどのように時間、空間、動作や学習といったコミュニケーションのさまざまな局面を構成しているのかという問題について、コンドン博士につまびらかにしていただくことになった。ちなみにコンドン博士は、ホール博士とは長年の知己であり、またノースウエスタン大学ではかつて同僚としての親交ももたれていた。

 講師紹介

John Condon, Regents' Professor of Communication, University of New Mexico (USA) is a pioneer in the field of intercultural communication. An award-winning educator, his writings, including the first university textbook on the subject, and some of the first intercultural communication books in Japan, have been published in seven languages.

コンドン博士はニューメキシコ大学の最高位 Regent Professor、異文化コミュニケーション分野のパイオニア。栄誉ある教育者であるとともに、当分野の初の大学テキストや日本で出版された関連書は七つの言語に翻訳され読者層は広い。Summer Institute of Intercultural Communicationの設立メンバー。アジア、アフリカ、南米でも教育者として活躍中。

 講演会報告 (奥島美夏、異文化コミュニケーション研究所)

 異文化コミュニケーション分野の草分けであり『沈黙のことば(The Silent Language)』(日本語訳初出1966 年、南雲堂)の著者としても知られる文化人類学者エドワード・T・ホール(1914–2009)は、講師の長年の知己で、アメリカ・ノースウエスタン大学時代の同僚でもあった。同掲書が出版50 周年を迎えた本年、著者はこの世を去った。講師は存命中必ずしも文化人類学会で高く評価されていなかった彼の業績を振り返り、人間が日常生活の中で時間・空間・動作・学習といったコミュニケーションの様々な局面をどのように認識・実践し、それらの総体としての「文化」を構築しているのかを次世代に伝えた。

 ホールはニューメキシコの多様な言語・文化環境の中で育ち、早期からこうした異なる背景をもつ人々の言語活動と文化的所作の関係に興味をもっていた。この一連のセットをホールは非言語的諸側面をも含めた広義の「コミュニケーション」ととらえ、社会文化面だけでなく生物学・動物行動学的な要素をも考慮する研究手法を確立した。すなわち「文化はコミュニケーションであ」り、人間として変えがたい生物学的習性、一定の文化圏に属する者に共通する行動パターン、そして個人差・個体差という3 つの認識レベルが脳内に埋め込まれているとした。これらに沿って人が行動した結果、対人関係の親密度や葛藤などを反映したいくつかの距離や場、間/タイミングのパターンが生まれる。ホールはこの「かくれた次元」がある程度通文化的な現象ではないかと考え、多国籍企業における社員間のコミュニケーションなどを観察・分析していった。今日ではその全てが評価されているわけではないが、人間の本能に分かちがたく結びついている「文化」の一端を指摘した意義は大きい。

 なお、講師自身も異文化コミュニケーション分野のパイオニアの一人で、ニューメキシコ大学では最高位(Regent Professor)に叙せられている。当分野初の大学生向け教材や関連書は、日本語を含む7 言語に翻訳され広く支持され、アジア・アフリカ・南米諸国でも後進の指導にあたっている。

〈参考〉
ジョン・コンドン(近藤千恵訳)1980 『異文化コミュニケーション―カルチャー・ギャップの理解』サイマル出版会。


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