異文化コミュニケーション研究所
    Intercultural Communication Institute

 
第49回 異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ


タイトル

(シリーズ:多文化共生の未来とジレンマ)
第1回「隣人をよく知ろう」: 中国人留学生の生活・学業・就職

参加者

金 蓮花 さん (潟tルキャスト留学生支援事業部 / 本学国際コミュニケーション学科卒業生)
劉 東睿 さん (神田外語大学国際コミュニケーション学科3年)
金 美花 さん (神田外語大学国際コミュニケーション学科2年)

司  会

杉本 雅視 氏 (神田外語大学国際交流課)

使用言語

日本語

日  時

2007年6月19日(火) 17:00〜19:30 (開場:16:30〜)

場  所

神田外語大学(千葉・幕張) ミレニアムハウス
 06年5月現在、日本にいる外国人留学生は121,812人。このうち中国・韓国からの留学生は96,198人とおよそ8割を占める。07年4月現在、本学には16カ国・地域から約220名の留学生が在籍するが、1名を除いて学部留学生115名は中国、韓国からの留学生である。
 一見、日本人学生と変わりない大学生活を送っているように見える留学生だが、学外での生活は日本人学生と大きく異なる。そうした「隣人」どうしがより深く知りあえるよう、本学の中国人留学生とすでに日本企業で働いている中国人卒業生に登場願い、日本留学の実情と体験を語ってもらう。
 内容
(1)来日までの経緯・留学当初の生活(日本語学校・アルバイトなど)
(2)留学生活(学業面)専門学校・大学への受験・進学
(3)留学生活(生活面1)アルバイト・留学を継続のためのファイナンシャルプラン
(4)留学生活(生活面2)結婚・子育て
(5)就職活動・卒業生からみた留学生の就職意識
(6)留学生からみた日本人学生の印象
 講演会報告 (奥島美夏、異文化コミュニケーション研究所)

   2006年5月現在、日本にいる外国人留学生は121,812人で、このうち中国・韓国からの留学生は約8割の96,198人を占める。07年4月現在、本学にも16カ国・地域から約220名の留学生が在籍するが、学部留学生115名は1名を除いて全て中国・韓国出身者である。彼らは一見、日本人学生と変わりなく順調に大学生活を送っているようにみえるが、来日背景や学外での生活は日本人学生とは大きく異なっている。そうした「隣人」同士がより深く知りあえるよう、本学の中国人留学生とすでに日本企業で働いている中国人卒業生に登場願い、本学国際交流課で留学生を担当する杉本氏の司会と解説をもとに、日本留学の実情と体験を語ってもらった。
 本学中国人留学生の過半数は、中国朝鮮族も多い東北部(吉林省、遼寧省など)の出身者である。留学の主な動機は、当地の不景気や貧困問題から学費・生活費を稼ぐ必要に迫られたり、受験戦争の激化する中で大学進学が思うようにいかなかったりするためであるという。日本なら学生でもアルバイトがしやすく、通貨力の高さから家族へ若干の仕送りもできる可能性が高い。こうして国内にとどまるよりも日本へ行こうと決意した若者たちは、まず地元の日本語学校などで学びながら、指定された日本の語学学校・大学へ向かう。その査証手続きなどは業者に任せるが、日本に到着した瞬間からは全くの自力で全てに対処せねばならないため、やむをえず空港で知りあった他の留学生などと協力してアパート探しをしたり、アルバイトがみつかるまで世話になったりすることもある。大学進学までには150万円/年程かかるといわれ、永住権のない外国人は銀行ローンも組めない。よって日本の敷金・礼金などの慣習や家賃や学費の前払いは相当な負担となり、留学生同士で10〜30万円程の借金も珍しくない。
 こうした事情から、来日したもののやる気を失くしたり、アルバイトにのめりこんで通学しなくなったり、しまいには資格外就労者となってしまう留学生も多数出てくる。まともに語学学校で学ぶ留学生でも、日本語学校に入学するためには最低日本語能力試験2級、大学進学なら1級に相当する力が必要といわれるので、大学進学までにさらに留学生の一部が淘汰される。無事大学に入学した後も、アルバイトに精を出さなければ生活してゆけない。時給が10円違うだけでも200時間働けば2万円の差になるので、誰もが新聞配達や深夜のエスニックレストランなど、少しでも良い条件に移ろうと必死である。
 留学生の就職状況はさらに厳しく、当大学では全体の2割程にとどまっている。というのも、第1の理由として留学生は語学学校での就学期間などがあるぶん、年齢が日本人学生よりも2〜3歳は上回っているためである。次に、外国籍者は原則として採用しない、という規定を最初から設けている日本企業も多い。このため、留学生の中には就職できるまでは日本に残りたいと大学院へ進学する者や、留学生の才能を活用できるような派遣業などのサービス業分野で起業する者もいる。
 日本は現在、1980年代の「留学生10万人計画」から、1990年以降の外国人労働者・研修生に関する規制緩和を経て、ようやく大々的な入管法・雇用体系見直しの時期を迎えている。少子高齢化が進行する中、1〜2年の間にはおそらく留学生の受け入れ規模拡大や就職支援に関する新たな展開も考えられる。ますます増えるだろう留学生と受け入れ社会の相互理解をさらに深め、共生関係を模索することは必須である。


  異文研HOME